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日本のモノレール 熱海モノレール
東山公園モノレール車両

東山公園モノレール

-Higashiyama Monorail-
Suspended monorail (SAFEGE) system , Mitsubishi


三菱重工業が、国内へのモノレール導入に乗り出した実験路線

社名 名古屋市交通局協力会
名古屋市交通局協力会東山公園モノレール
開業年月日 1964年(昭和39年)2月8日
営業距離 471 m(営業k:0.5 km)
駅数 2(動物園〜植物園間)
複・単線 単線
モノレール方式 懸垂式(サフェージュ式)
車両 電化方式:直流600 V
車両数:1

東山公園モノレール車両歩道橋上より

1.東山公園モノレールとは


通称、東山公園モノレールとは、かつて愛知県名古屋市にある東山公園で営業運転を行っていた懸垂式モノレール路線です。
運営は名古屋市交通局協力会が行い、動物園と植物園間わずか2駅間0.5kmを往復していました。

東山公園モノレール公園側より  東山公園モノレール車両拡大

実はこの路線、日本国内における懸垂式モノレールの基盤を作った路線といっても過言ではありません。
当時三菱重工業は、フランスの企業連合サフェージュ (SAFEGE) より導入したモノレールシステム(サフェージュ式)の実験路線を計画していました。
東山公園では、植物園と動物園の間を結ぶ本格的な観客輸送用の路線建設が議論されいたため、上記路線を計画していた三菱重工業は名古屋市へサフェージュ式モノレールの導入を提案しました。
三菱重工は実験線の開業によってサフェージュ式の試験データを収集をする代わりとして、システムの保守管理を低廉で行う事を決定しました。

1964年(昭和39年)2月8日、三菱が建設費用約2億円を持ち、名古屋市交通局(名古屋市交通局協力会)による運営によって開業を果たしました。
車両は1両編成とし、アルミ合金の車体に赤い帯を配した塗装は、その後ウルトラマンにもなぞらえられました。

 東山公園モノレールリニューアル告知

 東山公園モノレール車両遠方より撮影


旧植物園駅の名板 東山モノレール 
写真 駅舎壁面に掲載されている名板

使用鋼材製作者欄には富士製鐵株式會社および八幡製鐵株式會社の表記があります。
富士製鐵株式會社(ふじせいてつ:Fuji Iron&SteelCo.,Ltd.)および八幡製鐵株式會社(やわたせいてつ:Yawata Iron&SteelCo.,Ltd.)は、かつて存在した日本の鉄鋼メーカーです。両社は1970年(昭和45年)に合併し、新日本製鐵(新日鉄)となりました。更に2012年10月1日に住友金属工業と合併し、商号を「新日鐵住金」へと変更しています。

元々は1934年(S9)年にまでさかのぼります。
官営八幡製鐵所を中心に複数の製鉄業者が合同して1934年(昭和9年)に、日本製鐵株式會社(日鉄)が発足。日鉄は太平洋戦争後の財閥解体によって4社へ分割されました。同法の廃止後、このうちの八幡製鐵株式會社と富士製鐵株式會社が合併し現在に至ります。表記の名板はこの時代を色濃く示す貴重な資料であると言えます。

 

2.東山動植物園


東山動植物園は、1937年と古くに開園した名古屋市営の動植物園です。
名古屋市営地下鉄東山線の東山公園駅を最寄駅とし、動物園および植物園で構成されています。
園内には動植物園の他に、東山スカイタワーや遊園地が併設されています。
開園50周年記念時には、5両編成の小型モノレール「スカイビュートレイン」が運行を開始しており、東山公園モノレールの後継的存在として語られています。

 東山動植物園へは、地下鉄東西線出口より徒歩5分ほど
東山動植物園入り口は、地下鉄東西線出口より徒歩およそ5分の位置にある。
 東山動物園正門
東山動植物園入り口
 東山公園モノレール車両スカイビュートレインより
正門近くから植物園までを結ぶスカイビュートレイン(園内のミニモノレール)に乗車する。しばらくすると、車内から静置された東山公園モノレール跡が見える。
 園内の隅に眠る東山モノレール
東山モノレール跡は、正門より入って植物園よりに静置されている。

3.サフェージュ(SAFEGE)式モノレール


今日日本国内において、懸垂式ではサフェージュ式(三菱)、跨座式ではアルウェーグ式(日立)が主流となっています。
実はここ名古屋には、その二つのモノレール方式における元祖とも言える路線が揃っています。
懸垂式では当頁で紹介する東山公園モノレール(サフェージュ式)、跨座式では名鉄モンキーパークモノレール線です。
いずれも後の国内モノレール建設における基礎の役割を担いました。

3-1.サフェージュ(SAFEGE)式モノレール


サフェージュ(SAFEGE)式は、フランスのLucien Chadensonら設計チームが、1957年頃に開発した懸垂型方式のモノレールです。
現在にいたるまで国内では特に、主なモノレール方式の一つとなっています。
また国外においても、基本骨格をサフェージュ式とするいくつかの懸垂式モノレールが運行されています。主要な路線としては、ドイツではH-Bahn(ドルトムント)やSkytrain(デュッセルドルフ国際空港)が、シーメンスによって開発されたSIPEMシステムによって運行されています。
また、近年急速な成長を見せる中国国内においても、北京にて上記システムを用いた懸垂式モノレールの建設が計画されています。

サフェージュ(SAFEGE)式という名称は、この方式を開発するために集結した、フランス国内の企業25社による連合の頭字語 (Societe Anonyme Francaise d' Etude de Gestion et d' Entreprises)から取っています。
基本骨格としては、コの字に配された軌道桁の下部分より車体をぶら下げ、桁内の走行台車によって可動するという構造を取っています。
上記構造のため、走行区画が雨水や積雪からの影響を受ける事が少なく、天候に強いという特性を持っています。

 東山公園モノレールの軌道桁  SAFEGE式モノレールの軌道桁

遠く離れた日本では、三菱重工業が主体となり、SAFEGEよりサフェージュ式モノレールの技術導入を行いました(日本エアウェイ開発の設立)。
以後、前項で紹介した経歴を辿り、東山公園モノレールが開業します。
東山公園で培った実用データを基に、その後の湘南モノレールおよび千葉都市モノレールの開業へ繋がっていきます。
このうち、千葉都市モノレールについては、今日まで懸垂式モノレール営業距離においてギネスブックに登録されています。

 湘南モノレールは東山公園をベースとする
写真右 湘南モノレール
サフェージュ(SAFEGE)式モノレールにおける
本格的な営業路線第一号となった。

 世界最長路線となった千葉都市モノレール
写真左 千葉都市モノレール
千葉都市モノレールは、懸垂式モノレールでの
営業距離においてギネスブックに登録されている。


3-2.Fahrenheit 451「華氏451」と、オルレアン実験線


「華氏451」とは、フランソワ・トリュフォー監督による1966年のイギリス映画。
原作はレイ・ブラッドベリ著「華氏451度」で、タイトルの華氏451度とは紙の燃焼が始まる華氏451℃(=摂氏233℃)を意味します。
本の存在を禁止された活字の存在しない未来社会という設定で、主人公は消防士を職業とする主人公モンターグ。
消防士といっても、周知されているような消火活動を行うものではなく、禁止されている書物の捜索と焼却を行う事を目的としていました。
主人公モンターグは、クラリスという女性と知り合った事から本について興味を持ち始め、やがて・・・。

この「華氏451」の映画の中で、主人公モンターグとクラリスが通勤に使う交通手段としてモノレールが採用されています。
「華氏451」のストーリー中、オルレアン実験線の様子が初端から終盤手前まで満遍なく登場するため、興味のある方は是非レンタルしていただきたいと思います。

東山公園へSAFEGE式モノレールが導入される以前、本国フランスのオルレアンの東方シャトーヌフ-スュル-ロワールに、およそ1300mのSAFEGE式モノレール実験線が導入されました。
このオルレアン実験線にはSAFEGE式モノレールでは第1号となる分岐器や、簡易の車両施設が設けられていました。
当モノレールの写真や資料が少ない中、上述した「華氏451」は、貴重な映像資料として現在でも取り扱われています。

映画中では車両窓からの景色に、実際の実験線車両からの景色が写されており、当時の沿線の様子を伺う事ができます。
軌道桁には内リムタイプの物が使用されている事が推定され、実験線の大半は外覆のない架設軌道だった事が分かります。
映画中は、モノレール車両が何度も行き交っている様子がありますが、実際の車両は1編成のみで、この1編成が往復を繰り返し撮影を行っていました。
また、乗降時は床面の脱出梯子を使用し乗降している様子が写っています。
これらは、撮影用の演出のためのものと推定され、実際には側面の乗降口を使用する物としていました。

これらオルレアンの実験線(軌道桁)は既に撤去解体されており、現存しません。

4.廃止


1974年(S49年)6月1日に運行休止、同年12月18日に廃線となりました。
現在モノレール車両は旧植物園駅(売店直上)に移動され、当時の鋼軌道桁とともに静置されています。

スカビュートレイン車内から見る東山公園モノレール
スカイビュートレイン(園内のミニモノレール)[後述]から見える東山公園モノレール跡。
 スカイビュートレイン(ミニモノレール)の軌道
スカイビュートレインの軌道。
奥に見えているのが保存されている東山公園モノレール。
かつてモノレール軌道は、画像に見えているスカイビュートレインの軌道付近に設置されていた。

5.スカイビュートレイン


モノレール廃止後の1987年(S62年)、動物園開園50周年を記念し、遊戯施設として動物園(正門前)と植物園を結ぶ小型の跨座式モノレールの「スカイビュートレイン」が開業しました。このモノレールは今日まで活躍を続けています。
 東山公園スカイビュートレイン  正門駅付近のスカイビュートレイン
 東山動植物園園内を周回するスカイビュートレイン
スカイビュートレイン モノレール車両
 スカイビュートレインとホームの様子
スカイビュートレイン ホーム

6.東山動植物園再生プラン


東山動植物園では、「東山動植物園再生プラン」が進んでいます。
東山公園モノレールもその一貫として、運行当時のカラーリング(赤と白)の復活や、国内のモノレール紹介ブース設置等が検討されているそうです。
長くシルバー一色だった東山公園モノレールも、今が見納めとなるかもしれません。
2016年2月追記)2016年2月、東山公園モノレールは運行当時のカラーリングにリニューアルされました。

東山モノレール再生プランのポスター 東山モノレールの保存活用イメージ
写真 付近の工事現場に設置された掲示物。

計画内容(掲載資料より)
・カラーリング変更(運行当時デザイン)
・動物園および植物園が一体化した頃(S43)の東山動植物園に絡めた展示
・他都市のモノレールの紹介

スケジュール(担当者の方より)
・カラーリング変更(運行当時デザイン)については年内頃予定
・その他については時期未定

その他(担当者の方より)
・モノレール車両への乗車可否については不可
 (設備上(安全面等)難しいものと思われます。)

売店があった頃の東山公園モノレール駅跡 現役時代の東山モノレール
写真 付近の工事現場では、運行当時の車両の様子を見る事も出来る。

撤去された東山モノレール下の売店 再生プランによって改修が始まった東山モノレール駅
写真 既に駅舎下部にあった売店は撤去され、改修工事が始まっていた。

東山モノレール駅窓口と執務室入り口 東山モノレール駅窓口
写真 券売窓口と名板

※計画内容およびスケジュールについては、東山動植物園案内所の方々、主管担当者の方からお話を伺いました。
この場をかりてお礼申し上げます。

東山動植物園再生プランの経緯年表
平成18年3月:東山動植物園再生プラン基本構想の提言
平成20年:第一期工事着手



 
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