モノレール海外編
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ジュメイラモノレール
ジュメイラ・モノレール
Palm Jumeirah Monorail
Straddle-beam monorail (ALWEG) system , Hitachi

アラブ首長国連邦ドバイの人工島パーム・ジュメイラには、島と対岸のジュメイラ地区を結ぶ全長約5.4キロメートルの跨座式モノレール「パーム・ジュメイラ・モノレール」が運行されている。パーム・ジュメイラは椰子の木を模して造成された大型リゾート開発地域であり、その幹に相当する軸上を縦断する形でモノレールが敷設されている。このプロジェクトは、観光客の大量流入や島内での交通需要増加を背景に、リゾート施設と本土側の交通網を結び付ける新しい手段として計画されたものである。

 パームジュメイラ
人工島、パーム・ジュメイラ外観
(c)Markus Mainka-AdobeStock

採用されているシステムは、日立製作所の跨座型モノレール方式で、同社が海外に向けて提供した無人自動運転システムとして知られている。車両製造だけではなく、運行管理システム、通信設備、電気設備、ホームドアに至るまで日立が包括的に担当しており、日本製の高度な鉄道システム技術を海外に示した代表例となった。車両は洗練された外観デザインが採用され、青と白を基調とした配色がリゾート景観と調和している。運転は完全に無人で行われ、中央制御室から監視・管理されている点も特徴である。
ジュメイラモノレール
(c)Shutterstock.com
ジュメイラモノレール車両
(c)Shutterstock.com

建設工事は2006年3月に開始され、日本の総合商社である丸紅がプロジェクトの施工に携わった。2008年には軌道が完成し、同年11月には試験走行が開始された。その後、2009年4月30日に営業運転が開始され、中東地域における本格的なモノレール路線として注目を集めた。運行開始当初から観光客の利用が多く、島内のホテル群や商業施設へのアクセス手段として重要な役割を果たしている。
 
(c)Shutterstock.com

このモノレールの最大の意義は、人工島という特殊な環境下で大量輸送を可能にし、自動車に頼りがちな交通体系の改善を試みた点にある。ドバイは急速な都市開発を続けており、渋滞や駐車スペースの逼迫といった課題が顕在化している。モノレールはそれらを緩和し、環境負荷の小さい交通手段として期待されている。また、モノレールを利用することで海上を見渡せる絶景を楽しむことができ、移動そのものを観光コンテンツとして提供している点も特徴的である。

一方で課題も存在する。乗客数は観光シーズンに偏る傾向があり、居住者の利用は必ずしも多くない。また将来的な拡張計画として、ドバイメトロのレッドライン(ドバイ・インターネット・シティ駅)までの約2キロメートルの延伸案が掲げられているが、需要予測や開発状況により着工時期は未確定となっている。都市鉄道との直結は利便性向上に大きく寄与すると見込まれ、今後の都市計画と合わせて重要な検討事項となるだろう。

総じてパーム・ジュメイラ・モノレールは、人工島開発と先端交通技術を結合したプロジェクトであり、観光都市ドバイを象徴するインフラのひとつと言える。日本のモノレール技術の国際的な評価向上に寄与している点も見逃せず、今後の都市交通発展やリゾート開発のモデルケースとして注目され続けている。

モノレール車両と駅舎 
(c)Shutterstock.com
パームジュメイラモノレール
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 palmjumeirahmonorail
ジュメイラ・モノレールのイメージパース
 palmjumeirah
人工島 パーム・ジュメイラ
 
(c)Shutterstock.com
パーム・ジュメイラ・モノレール(Palm Jumeirah Monorail) 諸元
項目 内容
路線名 パーム・ジュメイラ・モノレール(Palm Jumeirah Monorail)
所在地 アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ
路線種別 跨座式(ストラドル型)モノレール
システム供給 日立製作所(車両・運行管理・通信・電気・ホームドア)
運営事業者 Serco Middle East
開業日 2009年4月30日
起工 2006年3月
軌道完成 2008年7月
試験運行開始 2008年11月
路線延長 約5.4 km
車両・運転
最高速度 約70 km/h(参考値)
駅数 5駅
車両編成 3両編成 × 4編成納入
車両方式 ゴムタイヤ式・跨座型
運転方式 無人自動運転
電力方式 第三軌条方式
運転制御 中央制御室より遠隔監視・指令
延伸等
将来計画 ドバイメトロ レッドライン接続延伸(約2 km)


モノレール・ジャパン編集室(MJWS) 田村拓丸 Editor: Takumaru Tamura(文章 田村拓丸  MJWS編集室)
MJWS Representative / Editorial Desk
Based on information exchange with monorail operating companies, he gives community-oriented lectures. He engages in a wide range of activities aimed at maintaining and developing monorail infrastructure, including writing and editing monorail-related articles, designing layouts and illustrations, and more.
 


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